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加速化する市場変化に対して弾力的に対応しながら、新たなビジネス価値を創出する。そうしたイノベーションを支えるのがITであり、IT部門は経営戦略への関わりを深めることが求められている──。こうした理想が掲げられる一方で、現実に目を向けると、IT部門の状況は10年前からほとんど変わっていないようだ。アイ・ティー・アール(以下、ITR)の調査によれば、情報システムが重要であると位置付けて“いない”経営者は2001年から倍増、一般社員の理解や意識もほぼ変化していないことがわかった。IT部門の在り方や課題、組織に必要な変革、そして未来について、ITR 代表取締役の内山 悟志 氏が語った。
経営者は情報システムに期待していないという現実
2009年のリーマンショックを乗り越え、少しずつだが回復の兆しが見られるIT投資。イノベーションをキーワードに、グローバル化や短期間での価値創出、迅速な意思決定などに対応する基盤として、より戦略的にITを活用しようという動きが活発化している。
だが、理想と現実の隔たりは想像以上に大きいようだ。
「IT Trend 2013」の基調講演で登壇したITRの代表取締役、内山悟志氏は、2001年に実施した「IT戦略アンケート」とまったく同じ設問を、同じプロフィールの企業に対して2013年に実施した結果、システム監査の実施やコンピュータの利用基準の明文化など、内部統制に関連した施策で、いわば“守りのIT戦略”は大きく前進する一方で、「一般社員が情報システム部門の活動についてどのような理解を示しているか」「経営者が自社の情報システムをどう位置付けているか」といった、IT部門に対する意識はほぼ変化していないことが分かったと指摘した。
さらに情報システムは重要と位置付けていない経営者は、2001年の4%から8%に上昇するという、大変残念な結果も見られた。
「この約10年間、IT部門は守ることに注力してきたが、その地道な努力は経営者やユーザー部門に理解されていない。だが、顧客価値の創出やビジネス変革といった“攻めのIT”に転じるには、彼らの協力なくして実現できない。」(内山氏)。
実際、「IT投資動向調査2013」で、重要視するIT課題の4位に挙がった「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」や、5位の「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」など、ユーザー部門を巻き込む必要のある施策は、2006年、2009年、2012年と実施状況にほぼ変化がない。
こうした現実があるにもかかわらず、ITに“何とかしてもらいたい”という要求だけは膨らみ、結果的にIT部門は「役割の拡大と課題の複雑化・高度化」「人材およびスキル不足」「強いコスト抑制圧力」という三重苦をわずらい、新しい挑戦にすら踏み出せなくなっている。
未来の組織のキーワードは「トライブ」と「予測市場」
では、どうすれば組織は状況を打破し、変化できるのか。そのヒントを探るため、内山氏は未来の組織がどのように変化しているか、次の6つの予測を提示した。
- さらなるグローバル化の進展
- 就労者と就労形態の多様化
- トライブ化する組織と人材
- デュアルOS型組織への対応
- 大きな意思決定のオープン化
- 小さな意思決定の自動化
ここで内山氏が指摘したキーワードは、「トライブ」と「予測市場」だ。
【次ページ】3つの共通課題をどう解決するのか
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