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2010年6月に閣議決定された新成長戦略における21の国家プロジェクトの1つとして、「公共施設の民間開放と民間資金活用事業の推進」が示された。民間資金を活用することでインフラを整備するPFI法(Private Finance Initiative)を、PPP方式(Public-Private Partnership)にならって改正し、国や地方が所有するインフラ施設を使って収益事業を展開できる事業運営権を創設、民間企業に対し長期間にわたって付与する新方式を導入する。この改正によって具体的に何がもたらされるのか、日本のPFI法の問題点、先行する韓国や豪州などの諸外国との比較、アジアへのインフラ事業の輸出動向などについて、野村総合研究所の未来創発センター第三戦略研究室 主任研究員の福田隆之氏に伺った。
PFI(Private Finance Initiative)とは
公共事業に民間資金を取り入れる手法のこと。英国で社会資本整備を民間主導で行う仕組みとして導入され、日本でも1999年9月から「PFI推進法」が施行された。従来からの公共事業に民間資金を導入するものとしては、「第三セクター方式」があるが、これは官民が共同出資して経営に自治体も加わる。
これに対してPFIでは建設から運営までを民間企業に任せるとともに、予想外の事態により負担が増加する場合の負担処理についても、事前にリスク分担をきちんと決める点が大きな違い。「第三セクター」方式の問題点である“官民のもたれあい”による税金の無駄使いをなくすことを、大きな目標としている。
公的な施設や人口・諸機能が集積し投資効果が高い都市開発では多方面での取り組みが盛んである。
PPP(Public-Private Partnership)とは
途上国の持続的開発のためには民間企業のもつパワーが不可欠との観点から、近年、米国やドイツなど主要援助国では民間企業と連携した援助の新しい形態を模索する動きが目立っている。政府がODA資金を使って道路、港湾、エネルギーなどのインフラを整備した地域に民間企業が進出することで企業リスクを軽減、進出企業による技術移転、雇用機会の増大、貿易投資の拡大などを狙っている。
日本のPFIの手法を含む官民連携のスキームを国際的にはPPPと称することが一般的で、韓国、フランス、オーストラリアではPFIという語は使用せず、日本のPFIに相当するスキームをPPPと称している。
PFI法改正のポイント
──PPPとPFIの違いは何でしょうか?今回の法改正のポイントについても教えてください。
福田氏 PFIは日本ではPFI法によって定められていますが、PPPは市場化テスト、指定管理者、包括民間委託、アウトソーシングなども含まれるなど、明確な定義はありません。つまり、PFIよりも広範な概念として捉えています(
図1)。
政府では11の改革施策が打ち出されていますが、大きく下記の4つの項目にまとめることができます。
- 今後想定される公共施設の整備・更新費用の計画的な把握
- 公共インフラを官民が同条件で運営・所有できるようにするための施策
- 競争的なプロセスのなかで最適な事業提供者を選択できるようにするための施策
- 多様な投資家の参入を促して、政府とともに事業を監視させるための施策
──具体的にはどのような変更があるのでしょうか?
福田氏 大きなポイントの1つとして、「公物管理法」の改革があります。公物管理法とは、道路法、下水道法、空港法などのことで、従来これらの法律で定められた事業は民間企業が行うことができませんでした。改正案では、この公物管理法にPFI法の特例を設けて、民間企業が経営の事業主体となれるよう議論しています。
これらの事業分野では、経営権が法律上、すべて行政側にあったため、経営権が必要とされない分野のみがPFIの主な対象となっていました。本来、PFIは民間の経営ノウハウを求めるためのものなのに、経営ノウハウが必要とされている分野は法律上のしばりがあったのです。
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