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  • 2008/12/10 掲載

IPTVとは?インターネットTVとの違い、本格普及の可能性を探る【2分間Q&A(49)】

IP網を伝送経路としたビデオコンテンツ配信の仕組み

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IPTVは、IP網を伝送経路としたビデオコンテンツ配信の仕組み、およびサービスだ。世界でもトップクラスのブロードバンド先進国である日本では、このインフラを使ったテレビ放送、ビデオ・オン・デマンドサービスがさらに発展し、地上デジタル放送を凌駕するようなサービスに発展する可能性も秘めている。インターネットTVとの違いが分かりにくいIPTV、各種サービスとの違いも含めて体系立てて解説する。

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執筆:池田 冬彦
映像サービスの多様化

 IPTVは、FTTHやADSLなどのブロードバンドサービスを利用してビデオコンテンツを配信する仕組みである。現在、YouTubeに代表されるユーザー投稿型ビデオサービスや、プロバイダーやポータルサイトが提供する動画サービス、CS放送視聴サービス、ビデオ・オン・デマンド(VOD)によるビデオサービスなど、さまざまなサービスが乱立している。配信方法や視聴方法、視聴条件などが異なっているため、IPTVを解説する前に、まずはこれらの映像配信サービスを整理しておこう。

 ブロードバンドで視聴できるビデオコンテンツは、ADSL/FTTHの市場が立ち上がった2000年初頭から始まった。ストリーミングサーバにビデオデータを置き、Webブラウザからアクセスして「Windows Media Player」などを使って、PCでストリーミングデータを受信・視聴する。これが「インターネットテレビ」と呼ばれているサービスだ。

 サーバはインターネット上に置かれており、契約するISP(=事業者網)に関わらず視聴ができる。このサービスは、楽天とUSENが共同出資する有料サービス「ShowTime」や、USENが運営する無償サービス「GyaO!」、ヤフーが運営する「Yahoo!動画」などのビデオポータルサイトや、プロバイダーのポータルページなどを通じて、数多く配信されている。

 その一方で、IPTVのルーツと言えるサービスも登場した。2003年に登場した「ピカパー」(現「スカパー!光」)、そして、2004年にサービスを開始した「4th Media」や「オンデマンドTV」(現在「ひかりTV」に統合)などだ。これらはテレビでの視聴を前提としたサービスで、セットトップボックス(STB)と呼ばれる機器を使ってIP網のデータを受信し、テレビで視聴できるNTSCやデジタルビデオ信号に変換する。

 また、NTT東西の「地域IP網(NTT事業者網)」経由で配信されるため、「Bフレッツ」などのNTT東西が提供するFTTHサービスを利用していることが条件だ。いわば、CATVの同軸ケーブルの代わりにブロードバンド回線を使って番組を視聴するサービス、と考えるとわかりやすいだろう。このように、IPTVは、CS、BSの専門チャンネルや、地上デジタル放送など、電波によって「放送」されているもの、再送信とVODなどの付加サービスを原則的に事業者網で提供するものを指す。

図1
※クリックで拡大

図1 現在主流のビデオコンテンツ配信の仕組み



 なお、「YouTube」などのユーザー投稿型のビデオ共有サービスやアップルのiTunes Storeでの映画・テレビ番組の配信(米国のみ)、ミュージックビデオ配信は、ファイルのダウンロードによって行われている。YouTubeの場合は、PCにダウンロードしたビデオファイルを「Flash Player」で再生し、iTunes Storeの場合は、アップルの音楽・ビデオ管理ソフト「iTunes」でダウンロード・再生する仕組みだ。

 また、松下電器、ソニーなど家電メーカー5社が出資する「アクトビラ」は、対応するテレビを直接インターネットに接続し、映画などのストリーミングを視聴できるサービスを提供している。コンテンツは現在、TSUTAYAが提供する映画・ドラマコンテンツのVODサービスがメインだ。仕組みそのものはインターネットテレビ型だが、対応テレビでのみ視聴するサービスであることがポイントだ。

 これら新しい映像配信方法と主な提供事業者について、表1にまとめたのでご覧いただきたい(いわゆる既存のテレビ、ケーブルテレビなどを除く)。ちなみに、既存の地上アナログ/デジタル放送やCATVは著 作権法上「放送」であるが、IPTVやインターネットテレビ、 ユーザー投稿型ビデオなど、インターネットを使って配信するものは「通信」となるため、「放送」で許諾が取れていても、別途「通信」 の許諾が必要、など著作権の承認作業は面倒だ。

表1 代表的な映像配信サービス
種別サービス名事業者
インターネットテレビ型Gyao!USEN
Yahoo!動画Yahoo! Japan
ShowTimeショウタイム
アクトビラ(*1)アクトビラ
NHKオンデマンド(*2)NHK
ユーザ投稿型YouTubeGoogle
MySpaceマイスペース
ダウンロード販売型iTunes StoreApple
IPTV型ひかりTVNTTぷらら
スカパー!光(フレッツテレビ)オプティキャスト
BBTVBBケーブル
ひかりoneTVKDDI
(*1)PCでの視聴は不可。アクトビラ対応のテレビのみ視聴可能
(*2)2008年12月1日よりサービス開始、アクトビラ、ひかりTVでも提供


IPTVを巡る標準化動向

 IPTVの仕様の国際標準化については、2006年に「ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)」において、IPTVのFocus Group(FG-IPTV)を設置し、IPTVの世界的な標準規格に向けて動き出した。その後FG-IPTVの成果を引き継いだ「IPTV-GSI(IPTV Global Standard Initiative)」で、IPTVのサービス要求条件やセキュリティに関する要求項目など、さまざまな勧告案が承認され、標準化に向けた最終局面を迎えている。

 また、日本では2006年に総務省による「IPTVフォーラム」が発足し、2008年6月には前団体とは別に、有限責任中間法人として同名のフォーラムが設立。NTTぷらら、KDDI、ソフトバンクBBなどの通信事業者、テレビ朝日、東京放送、日本テレビ放送網、日本放送協会(NHK)、フジテレビジョンなどの放送事業者、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、松下電器産業などの家電メーカーが参加して仕様の検討に入っている。

 IPTVフォーラムの狙いは、旧IPTVフォーラムの成果を受けて、国内における共通の技術仕様を策定し、IPTVサービスの利用促進を図ることにある。現在提供されているIPTVサービスは、事業者ごとにそれぞれ仕様が異なる。これを一本化すれば、これまで独自に開発していた送出設備やSTBの開発・運用コストの低減が期待できる。

 2008年7月には国内IPTV受信機の共通仕様のドラフト案がまとめられ、2008年末にはこの仕様に対応するSTBが登場する見込みだ。なお、ドラフト案ではNTTぷららの「ひかりTV」に採用されている規格と「アクトビラ」が採用するデジタルテレビ情報化研究会の規格が取り込まれ、双方のサービスに対応する規格として標準化が進められている。

 また、米AT&Tやフランステレコム、松下電器、フィリップス、ソニーなど家電、通信大手9社は2007年3月に「オープンIPTVフォーラム」を設立し、SIPをベースとして固定/携帯電話を統合するための「IMS」という仕組みで家庭用テレビと携帯端末向けのモバイルTVの仕様を提唱している。現在のところIPTVフォーラムとオープンIPTVフォーラムとの協調関係はない。

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