製造業は「SCMによる事業の信頼性」が必須

　TDKは売上が約2兆円、生産拠点23拠点、販売拠点10拠点、約90種類の製品を擁する製造業だ。同社では『Seven Seas』と呼ばれる、中長期的に取り組む重点領域、『Beyond 5G』『IoT』『ロボティクス』『AR/VR』『メディカル／ヘルスケア』『モビリティ ADAS/EV』『再生可能エネルギー』の7領域で、新たな価値提供を目指している。

　一方、昨今の経営環境は変化が激しく、先行きが不透明な状況が続いている。そのため企業は迅速な意思決定を行う必要があるが、多くの企業はシステムのサイロ化と、地域・拠点ごとの業務プロセスの属人化が大きな課題となっている。

　TDK 電子部品ビジネスカンパニー ビジネスプロセス＆オペレーショングループ General Managerの斎藤 義広氏は、「製造業というビジネスモデルにおいても、これまでのような技術やモノづくりだけではない、SCMによる事業の信頼性という付加価値が求められる時代になってきました」と話す。


「今後の事業継続・成長を図るためには、個別最適から脱却し、国内外にある拠点間でシームレスなコラボレーションを強化して、標準化された業務プロセスと明確なルールを確立することが不可欠となります（斎藤氏）

メールやExcelなど…情報連携が「バケツリレー状態」

　しかし、当時のTDKは先の課題にあったように情報連携がスムーズに行える環境が整備されておらず、「情報のバケツリレー状態」だったという。


「お客さまから販社、工場、サプライヤーのすべてで、個別の仕組みが導入されていました。そしてそれぞれの仕組みの中で、メールやExcelファイルなどで、バケツリレー式に情報を連携していたような状況だったのです」（斎藤氏）

　この状況では部門間やシステム間でさまざまなロスが生じるため、「経営環境の変化に柔軟に、迅速に対応していくことが難しい状況でした」と斎藤氏は振り返る。そして、各組織が異なるシステムを導入していると、業務プロセスも人に依存してしまう。

　そこでTDKでは、「サプライチェーン全体で共通の仕組みを導入し、情報の粒度、鮮度を高めてシームレスに連携できる環境を構築していくこと」から取り組んでいくことにした。そして2023年、より効率的なコラボレーションと優れた意思決定を目指して始まったのが「シームレスSCMプロジェクト」だ。 【次ページ】経験して実感、SCM変革に必要な「6つのポイント」