0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
オンラインよりも先にオフラインのVR体験ゾーンが続々
上海のShanghai Famikuは、他の3社とは少し毛色が異なる企業だ。同社のファウンダー&CEOであるFredrick氏は、2003年にオンラインゲーム会社、2009年にアーケードゲーム会社を設立。その後、2014年にVR化したオフラインのアーケードゲーム会社、Shanghai Famikuを設立した。
実は、この社名は日本にゆかりがあるものだという。Famikuは、日本のファミコン雑誌の草分け「週刊ファミ通」から取った。同氏の世代では日本のゲームの影響を強く受けているわけだ。「中国でアーケードゲームを楽しむ人は、日本のゲームをよく知っている。ファミコン世代が大人になっても親しみをもっていると思った」(Fredrick氏)。
同社は、上海でVR化したアーケードゲームを楽しめるにように、1000平方メートルの広さの「VRパーク」を作っている。アリババなどのEC市場が成長したため、リアルなショッピングモールは買い物をする場所というよりも、カラオケや映画、ゲームセンターなど娯楽の場所に変わりつつある。
「こういった娯楽施設は陳腐化してる。そこで新しいVRのエクスペリエンスが必要だと感じた。アーケードゲームは、ブレースルーが生まれるOutputの分野が重要だが、VRが登場してからは体感的なInputもいっそう重要になった」(Fredrick氏)。
中国では、すでに3000以上ものオフラインのVR体験ゾーンがあるそうだ。同社のアーケードは、どのように差別化を図るのだろう?
「かつてゲームセンターは大面積でないと許可が下りなかった。しかし小面積でも運営できるようになり、VR体験ゾーンも小規模な場所に進出している。我々は大規模なゲームセンター市場でもシェアを取っていきたい」(Fredrick氏)
Famikuの筐体とコンテンツの80%が自社開発だ。自社でハードウェアとソフトウェアを開発し、OEMでも提供している。VR体験ゾーンは有料で、2時間で150元ほど。その料金は映画と比べて同じぐらいで、ゲームセンターで使う金額とほぼ同じだという。
深センの電脳街・華僑北路では、VR出荷量が毎月3000万台を超える
続いて、4名のキープレイヤーによるディスカッションが行われた。まずモデレーターの田中氏は、あらためて中国のVRに関する認知度について尋ねた。
Pico社のZu氏は、個人的な意見と前置きしたうえで「この半年で一般コンシューマーの認知度は高まった。CCTV(中国国営放送)も盛んにVRについて報道しているが、地域によって差があるようだ。中国はチャンスが多いと思われているがギャップもある。3大VRメーカーのほかにも海賊版メーカーがあり、1000万台ぐらい出回り、正規メーカーよりも存在感が大きい。またCardboardのような普及型VR機器はあるが、十分なエクスペリエンスを得られてはいない」と問題点を指摘した。
それに対して田中氏は「海賊版が出ても、正規メーカーは収益を上げられるのか?」と質問した。
3GlassesのLin氏は「我々は粗利をあげているが、VRは始まったばかりで赤字状態だ。とはいえ、市場は大きい。深センの電脳街・華僑北路では、VR出荷量が毎月3000万台を超える。VRの場合はPC用/モバイル用/Cardboard用で分類したほうがよいだろう。最も価格が安いCard board用は20元ぐらいで、出荷量は多いが使い捨ての低品質な製品だ。これらは未来のエクスペリエンスを提供する製品ではなく、区別して考えるべき」と説明する。
田中氏は「華僑北路でVR機器の出荷量が毎月3000万台もあるのは、世界中からバイヤーが買い付けにくるからだ。ローエンドのCardboard用が最も売れており、底辺からVRの渦が回り始めた」と補足する。
中国のVR企業は、ハードウェアから、ソフトウェア、プラットフォームまでを有する垂直統合型企業が多い。田中氏は、垂直統合型企業のメリットについても尋ねた。
Baofeng MojinのXianzhong氏は「我々もソフトウェアを出荷しているが、中国企業はハードウェアもやらないと生き残れない。なぜならハードウェアはネットの入口になるものだからだ。シャオミのような新企業はソフトウェアもつくっている。いまはコアで競争が激しく、垂直統合型ですべてのモノが必要だ。VR市場は、他国との協力の余地も大きいと思う」と現状を分析した。
日本は優れたコンテンツでビジネスチャンスを狙え!
中国は現在、スマホなどで世界最大のサプライヤーになっている。ではVR市場でも同じ状況になるのだろうか。田中氏は「VRの普及はいつ実現しそうか?」と問いかけた。
Zu氏は「VRが本当にコンシューマーの生活の一部になるには、あと3年から5年ぐらいはかかると思う。そのときエクスペリエンスだけでなく、価格もスマホと同じようになっていくだろう」と予測する。
一方、VRアーケード市場で戦うFredrick氏も「技術面は成熟しつつある。アーリーステージでは、スマホは海外製品が強かったが、技術が成熟すると中国にもチャンスが出てきた。いまやAndroidは中国製品もハイエンドになった。VR機器もハードウェアで同様の状況になるだろう」と推測する。
最後に田中氏は「日本企業と今後どのように手を組んでいくのか?ビジネスチャンスはあるのか?あるいは淘汰されてしまうのか?」と問うた。
「日本企業には独自の優位性がある。特にコンテンツには創造性があり、高精細なハイエンドな作品や、エクスペリエンスでも優れていると思う」(Zu氏)
「我々は日本の技術レベルに見合うハードウェアをつくり、VR市場を開拓していきたい。いま自身のコンテンツも半数が海外で開発されてるため、ぜひ日本企業も我々のプラットフォームを活用してほしい」(Lin氏)
「我々は日本企業と協力している。コンテンツは人気があり、中国の作品より10倍もダウンロード数が多い。ローカライズせず、日本語でもニーズがある。中国にはプラットフォームはあるが、優秀なコンテンツが欠けているので、協力してほしい」(Xianzhong氏)
「中国ではアーケードとVRが合体したオフラインでビジネスチャンスがある。しかし優れたVRコンテンツは少ない。海外コンテンツの場合は、ローカライズの問題だけでなく、中国化したコンテンツが重要だ。中国のスタイルに合わせることで、初めて収益化が可能になるだろう。我々の市場にマッチするように協力してほしい」(Frederick氏)
最後に田中氏は「中国のモバイルVRは、今後あっという間に世界を席捲するかもしれない。逆に日本から見たビジネスチャンスは、お金を落としてくれる数億人のVRユーザーがいることだ。日本のコンテンツは中国でヒットする可能性があるため、パートナーシップを進めてほしい」と討論をまとめた。
ここから先は「ビジネス+IT」会員に登録された方のみ、ご覧いただけます。
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
評価する
いいね!でぜひ著者を応援してください
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
関連タグ