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  • 2017/08/09 掲載

グーグルのトップアナリストが伝授! 一休やIDOMが成果を出したマーケティングの極意

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近年のマーケティングは、さまざまなデータを取得し、自動化や機械学習などの手段により、データに裏打ちされた根拠に基づいた判断やアクションが行えるようになってきた。では、実際に現在どのようなところまで、データドリブン・マーケティングが可能になっているのだろうか? 先ごろ開催された「ADVERTISING WEEK ASIA」では、グーグルの高橋 建人氏が、グーグル流のデータドリブン・マーケティング手法とその事例について説明した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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グーグル合同会社 プリンシパルアナリティカルリード 高橋建人氏

データを活用できている企業は3割にも満たない

 いまグーグルでは、毎日5億の新しいキーワードの組み合わせから検索が行われている。その背景には、モバイルデバイスの普及による情報接点の増加が挙げられる。この10年間を振り返ってみると、メディアに接触する時間の中で、携帯電話やスマートフォンを経由している割合は約8倍、全体の4分の1まで増加しているそうだ。

 つまり、ユーザーによる情報接点が増え、その活用方法も大きく変わってきているのだ。たとえば、電車の待ち時間にSNSをしたり、インターネットで動画を見たりと、新しい情報に触れる機会が増えていることを実感しているだろう。一方で、こういった情報接点の増加や活用の変化は、企業のマーケターにどのような影響を与えるのだろうか?

 高橋氏は「情報接点が増加すれば、リーチのタイミングも増えます。多様な情報接点において、企業が広告を届ける機会も増えていきます。しかし、自社にデータを持っていても、それがチャネルごとにバラバラになり、逆に真のユーザー像がつかみづらくなったという声もあります」と指摘する。

 これは同社のアンケート調査からも明らかだ。「あなたの企業では、データを最大限に活用できていますか?」という問いに、YESと答えた企業担当者は29%、約3割にも満たないのだ。では、このような現状をどう打破していけばよいのだろうか?

データを活用したマーケティング実現のための3つのポイント

 高橋氏は、グーグルが提唱する「データを最大活用したマーケティング」について紹介し、それを実現するための3つのポイントを説明した。

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グーグルが提唱する「データを最大活用したマーケティング」を実現するための3つのポイント

 1つ目は「チャネルごとから顧客ごとのデータへ」というポイントだ。いま企業では、オンラインデータを収集する一方で、実店舗やテレビCMなどのオフラインデータも収集している。このようにマーケティング部門は多様なデータを見ているが、その他の営業、経営企画、流通などの部門も、さまざまなデータを追っている。

「しかしチャネルが多様化する中で、データをチャンネルごとに取っても、真のユーザー像を捉えらません。チャネルごとのデータを集めるのではなく、顧客ごとにデータを集めていくことが、1つ目の重要な要件になると、我々は考えています」(高橋氏)

 2つ目は「機械学習を活用できるマーケティングプロセスへ」というポイントである。これは、データを集めたあとに機械学習をうまく活用できるようにすることだ。グーグルはマーケティングで機械学習を活用するために、さまざまなツールを提供している。

「シンプルな例としては、どのくらいの獲得コストでユーザーを取りたいのかといったビジネス要件を与えるだけで、自動的に獲得件数を最大化してくれるようなイメージです。高度なシステムを開発せず、マーケターはビジネスのゴールを定義し、データを整え、マーケティングプロセスのみに注力できるようになります」(高橋氏)

 そして3つ目は「マーケティング投資の評価を経営指標で行う」ということだ。これは「利益をベースに、きちんとマーケティング投資も強化しましょう」という意味だ。

「当たり前のことと思われるかもしれませんが、実際にマーケティング現場で使うリーチや獲得コストなどの一般指標を、最終利益としてどう見ていくかということです。そのために必要なデータフローやデータを可視化するダッシュボードなどを整備し、マーケティング投資をKPIベースで評価することが大切です」(高橋氏)

データドリブン・マーケティングで17%もROASを改善した一休.com

 続いて高橋氏は、このようなグーグル流データドリブン・マーケティングによって成功した「一休.com」の事例を紹介した。一休.comは、高級ホテルや高級旅館などに特化した予約を中心に、さまざまなオンラインサービスを展開するサイトだ。

 一休.comも、以前はチャネルごとにバラバラのデータを追っていた。部門ごとに異なるデータを見ていたため、ユーザーが分離し、認識の齟齬が起きていたのだ。そこで同社では、広告とサイトのデータに加え、自社のCRMデータを「Google Cloud Platform」(GCP)のエンタープライズ向けフルマネージドDWH「BigQuery」にアップロードし、各データベースを連結することで、すべてのデータを顧客ごとに統合した。

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一休.comの事例。広告、サイトのデータとCRMデータをGCPのBigQueryで連結し、すべてのデータを顧客ごとに統合した

 次に、同社はデータを機械学習で活用するためのプロセスを整備し、顧客ごとのメッセージを機械学習で最適化した。このステップでは、キーワードに対する顧客接点ごとの「貢献度」を可視化したという。

「具体的には、広告データなどから顧客がどういう接点で予約したのかを把握しました。それをベースに機械学習で複雑な計算を行って、貢献度を出しました。顧客接点の貢献度に応じ、貢献度の高いパスには高い広告を出すように自動入札を行います。これにより、最も貢献度の高い顧客接点に重点的なメッセージが届くようになりました」(高橋氏)

 その結果、これまではリーチできなかった、検討初期段階でコンバージョンに至る確率が高い顧客に対しても、しっかりメッセージが届くようになり、65%ほどキーワード(顧客接点)の種類が増加したそうだ。

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一休.comの事例。顧客一人ひとりのメッセージを機械学習で最適化し、キーワード(顧客接点)の種類が65%も増加した

 次に同社では、接点ごとに広告投資の評価と配分を行ったのち、各接点からの収益をセッション単位で可視化するようにした。

「キーワードによってどれくらい効果が得られ、収益が上がるのかというデータを蓄積し、それを再び機械学習にかけて、マーケティング投資からの利益(ROAS)を最大化することに成功しました。この施策後には、17%もROASが改善されました」(高橋氏)

【次ページ】 申込率1.8倍アップ、店舗側への送客を25%アップしたIDOM(旧ガリバーインターナショナル)

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