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  • 2017/05/26 掲載

統合システムとは何か? ハイパーコンバージドのゆくえと比較・選定のポイント

ガートナー 青山浩子氏が解説

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ビジネス環境の変化のスピードに柔軟に対応することが、企業のIT部門には求められる。ビジネス部門の多様なニーズに応えていくため、拡張性や多様性に優れ、スピーディなデータセンター構築を可能にする「統合システム」が、新たな発展段階に入ってきた。「コンバージド」「ハイパーコンバージド・インフラ」をはじめとする統合システムは今後どうなっていくのか。ガートナー リサーチ 主席アナリストの青山 浩子氏が、「次世代のインフラ構築とベンダー選定」をポイントに、統合システムの現状と将来について解説した。
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統合システムは、IT部門の役割にも大きな変化をもたらす
(© Oleksandr Delyk – Fotolia)


※本記事は、「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」の講演内容をもとに再構成したものです。

「統合システム」とはいったい何か?

 ビジネス環境の変化に対応していくため、スピーディなITインフラの構築、デリバリーはどの企業にとっても重要な課題だ。そこで「コンバージド」「ハイパーコンバージド・インフラ」などと呼ばれる「統合システム」が、改めて注目を集めている。

 しかし、統合システム製品が多様化し、企業には“コンバージド”にまつわる混乱も見られている。ガートナーが2017年1月に行った調査によれば、統合システムを「重要である」と考える企業は51%で、この数字は2015年調査時から5ポイント減少した。

 一方で、「特に重要とは思わない」と考える企業は27%で、こちらは2015年調査時から5ポイントも増加している。この背景にはテクノロジーの急速な発展がある。各社各様の名称があり、「統合システム」が指すものが曖昧になっていることに加え、ベンダーの買収・撤退、製品ブランドの統廃合なども盛んで、これがユーザー企業の混乱の原因になっているからだ。

 しかし、ガートナーは、統合システムを次世代インフラとして重要になると考えている。ユーザー企業には、ぜひその本質を理解して、将来に備えて欲しい。

 ガートナーの定義する「統合システム」とは、「サーバ、ストレージ、ネットワークのインフラストラクチャを組み合わせ、プロビジョニングと管理を容易にする管理ソフトウェアを備えたシステム」のことである。

 「コンバージド・インフラストラクチャ」(CI)と「ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ」(HCI)に大別され、CIにはハードウェアベースで統合された「統合インフラストラクチャ・システム」や、アプリケーションベースで統合される「統合スタック・システム」などがある。

 そして、HCIの代表的な製品が「ハイパーコンバージド・統合システム」だ。CIとHCIの大きな違いは、HCIは外付けのストレージを使わず、汎用サーバに備わるDAS(Direct-Attached Storage)を用い、ソフトウェアで制御を行う点にある。

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統合システムとは何か?
(出典:ガートナー)


 また、「ソフトウェア・デファインド」か「ハードウェア・デファインド」か、あるいは、「モノリシック(垂直統合)」か「モジュラ(水平統合)」かの2軸で分類したとき、HCIは「ソフトウェア・デファインドで、水平統合されたアーキテクチャ」と位置づけることができる。

 統合システムが生まれた背景には、ITインフラに対する多様化したニーズがある。IoTなどさまざまなモノがつながってくる世界で、データ収集の範囲は爆発的に拡大している。また、企業は顧客一人ひとりにパーソナライズされた多様なサービスを提供しなければならない。そしてサービス提供のスピードがますます求められている。

 こうしたビジネス要件を満たすための新しいアーキテクチャ、テクノロジーを備えて生まれてきたのが統合システムといえる。

統合システムの導入でIT部門の注力ポイントが変わる

 統合システムの導入により、ITシステムの調達や評価、導入/展開、運用のやり方は変わっていく。

 標準化され検証済み、最適化されたシステムにより、製品評価は各コンポーネントの性能ではなく「システム」としての性能、信頼性、コストを評価することに変わる。

 また、本稼働まで最短で10分程度というスピードが喧伝されることもある。この点については「標準化された構成の場合」という但し書きがつく。当然ながら自社独自の仕様を検証する場合はこれより多くの時間がかかる点に注意したい。

 このようにシステムリソース全体の運用デザイン、ポリシー設定など、IT部門の注力ポイントが変わってくるのだ。こうした性質から、ユーザー企業からは統合システムにまつわるさまざまな声を聞く。

 たとえば「自社なりに作り込みたい部分が出てきた」「従来のSIと変わらず、コストが妥当かどうか比較判断しづらい」といった声である。

 こうした課題や悩みは、裏を返せば従来のITインフラの考え方にとらわれていることの証だともいえる。統合システムの導入に際してはビジネス要件の定義からシステム全体の運用デザインを考えなければならない。また統合システムがどんなワークロードに向いているかを理解することも重要だ。

 統合システム、特にHCIのメリットは「シンプルなシステムで標準的な機能が、外付けストレージなしで実現でき、容易に拡張できる」点にある。

 しかし、サーバとストレージを個別に追加して必要なリソースを確保することはできないし、企業のポリシーによっては、汎用的なサーバは選択肢から外れるデメリットがある。つまり、HCIは拡張性とスピードが求められる新規ワークロードに有効なインフラといえる。

【次ページ】統合システムを巡るベンダーの動向

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