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  • 2017/05/11 掲載

「ドローンを通じて産業を興したい」中国・深センとの協力で拓くドローンの未来

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中国・深センは、世界的に有名なDJIを筆頭に、ドローン企業だけで300社が集積する地域だ。ドローンによる新たな空域活用や既存産業との結びつきが注目される中、一般航空産業も深センの重点産業になっている。「第2回ジャパン・ドローン2017」に登壇した一般社団法人日本ドローンレース協会(Japan Drone Racing Association-JDRA)理事/海外事業責任者の川ノ上 和文氏、同協会代表理事 小寺 悠氏に加え、深セン市航空業協会(Shenzhen Aviation Association-SZAA)会長 朱 慶峰氏にインタビューを行ったので、講演の内容と併せて、中国で発展が著しいドローンと一般航空産業の将来、日本のドローン業界との結びつきについて紹介しよう。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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日本ドローンレース協会と深セン市航空業協会がパートナーシップを締結した。写真は左から川ノ上氏、朱氏、小寺氏

深センとパートナーを組み、ドローンレースを通じて“産業”を創出

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日本ドローンレース協会(JDRA)理事・海外事業責任者/
香港翼彩創新有限公司(xyZing.innovation.ltd) 代表
川ノ上 和文氏
 日本ドローンレース協会(以下、JDRA)の海外事業責任者、またドローンを軸としたMICE産業(後述)開発を行うxyZing.innovation社代表として、深センに活動拠点を置く川ノ上 和文氏は、中華圏と日本のドローン業界を結びつける橋渡し役として活躍する人物だ。川ノ上氏は「中国では、一般航空業という大きな枠組みの中で、最先端のドローン産業を考えており、その成長を肌身で感じている毎日です」と語る。

 JDRAは、時速150kmを超えるドローンレースを、未来のエンターテインメント・スポーツとして普及すべく活動している協会で、国内外の大会を企画・推進しており、レース以外にも空撮コンテスト、ドローン体験会、国際カンファレンスも実施し、ドローンの普及活動を行っている。国内では、国家戦略特区の仙台において、昨年6月に「JAPAN DRONE NATIONAL」を開催。ここでは1700人を超える観客を動員し、ドローンスポーツの大きな起爆剤になった。

 また今年2月には、長崎のハウステンボスにおいて、日本初となる夜間ドローンレース・空撮コンテスト「第3回JAPAN DRONE CHAMPIONSHIP in ハウステンボス」を開催。ネットのライブ配信と合わせて、延べ10万人以上が競技を観戦し、会場には3500人を超える観客が訪れた。


 JDRA 代表理事の小寺 悠氏は「ドローンレースは世界中で開催されていますが、日本では法規制の課題もありスタートが遅れています」と語る。

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日本ドローンレース協会(JDRA)代表理事、アジアドローンレース機構(ADRO)副会長
小寺 悠氏
「JDRAでは、2015年から精力的に活動に力を入れ始め、多くのドローンレースを開催してきました。今年は4回ほど国際大会を催す予定です。最近では日本選手のレベルもかなり上がってきています」(小寺氏)

 JDRAは、国内だけでなく、国際的な活動も積極的に推進しているところだ。2015年には日中韓でアジアドローンレース機構(ADRO)を立ち上げ、2016年には中国・韓国・アメリカ・イスラエル・タイ等のドローンレース団体代表者が韓国に集まりInternational Drone Commission(IDC)を立ち上げ、2018年、韓国・平昌で開催される冬季オリンピックのエキシビションで開催予定のドローンレースについて協議、JDRAは日本代表団を組成し参加する予定だという。

 川ノ上氏は「我々は、航空産業全体の中で、ドローンを通じて“産業”を興したいと考えています。そのために、日本と深センがパートナーを組んで、アジアにおける“MICE”を創出したい」と意気込みを語る。

ビジネスツアー、研修旅行、シンポジウムなど含めた“MICE”の拠点としても魅力的

 このMICEとは、あまり聞き慣れない言葉かもしれない。これは、会議・研修を行う「Meeting」、インセンティブの旅行に招く「Incentive Tour」、国際・学術会議の「Conference(Convention)」、展示会の「Exhibition」の頭文字を取った造語だ。

「MICEというフレームワークの中で、ドローンを考えながら、深センでビジネスツアーや研修旅行を企画したり、シンポジウムやドローンレースを考えています。各催事要素が連結され、俯瞰的にドローンについて学べ、体験でき、思考でき、発表でき、事業に繋がるような設計が必要です」(川ノ上氏)

 ドローン産業は、どちらかというとハードウェアが中心と見られがちだ。だが、さまざまな分野との掛け合わせもある。たとえばドローン×サプライチェーン、ドローン×既存・新規産業、ドローン×都市設計、ドローン×ライフスタイルなど、応用も幅広い。

「MICEというフレームワークの中で、ドローンを考えながら、深センでビジネスツアーや研修旅行を企画したり、シンポジウムやドローンレースを考えています。今年11月には深センでアジアの産官学各界のドローン関係者を招聘し“Asia Drone Forum2017”も開催する予定です。アジア各国の大学・研究機関・事業者がドローンをこの領域で使えないか? という”問い”を持ち寄り、実現可能性や阻害要因、その解決案について協議する場、教育機関や学生の研究発表の場、一般の方には進化の早いドローンの”今”をわかりやすく伝え、社会や生活がどう変わる可能性があるのか、その変化に”ワクワク”してもらえるような場の創出を目指しています」(川ノ上氏)

 中国の深センは、MICEの拠点もしくは、航空産業の拠点として大きな潜在力を持っている。現在、ドローン企業だけで300社もある。また深センの空港北側には、世界最大のコンベンションセンターも建設中だ。

「深センは、香港も近く、アジアへのアクセスも良好で、物流も発達してきた。人材も集まりやすく、海外留学の経験がある『海亀族』(海外に留学し、中国へと戻ってきたエリート)が、この10年間で70倍ぐらい増えた」(川ノ上氏)

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深センは、JDRAにとって、ドローンによるMICEに取り組む条件が整っている地域だという

 そうした状況の中でJDRAは、深セン航空業協会とパートナーシップを結んだという。

深センに集まるのは「金融とテクノロジーの両方に強みがあるから」

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深セン市航空業協会 会長
朱 慶峰氏
 深セン市航空業協会(SZAA)で会長を務める朱 慶峰氏は、「中国政府は、航空産業を戦略振興産業として位置づけています。その戦略を牽引する都市して、深センが注目を浴びています。深センは、金融とテクノロジー両方に強みがあり、新しいテクノロジーを生み出すのに最適な場所です」と強調する。

 中央政府は深センを経済特区とし、税制優遇を与えているため、優良な金融サプライチェーンが構築されている。テクノロジー産業に資金が集まり、強固な電子部品のサプライチェーンもつくられた。周辺都市や珠江デルタと連携し、一大経済圏を形成している。

 これが航空産業を支える重要な基盤になった。物流面では海に面しており、また空港も近くにあるのでアクセスも良い。国際貿易では中国内でナンバーワンになった深センは、航空宇宙産業を押し上げるパワーがある。

 その航空産業を支えるSZAAは、中国で最も早くできた業界団体だ。2003年に設立され、現在、約500社近い企業会員がいる。SZAAでは、一般航空分野と航空スポーツ分野の2つの柱を中心に航空業を取りまとめ、事業マッチングや行政とのパイプ役を果たしている。

「一般航空産業分野は固定翼やマルチコプターなどが対象です。一方、航空スポーツ分野はパラシュート、熱気球、パラグライダーなどのスポーツが含まれる。そういう意味では、飛ぶものすべてが我々の協会に関係があると言えるでしょう」(朱氏)

【次ページ】深センの将来を担うのは「前海」地区、香港との一体化が進む

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