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  • 2017/04/25 掲載

「トランプ政権」と「EUの南北問題」は第一次・第二次世界大戦を振り返ればよくわかる

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トランプ大統領の登場と、「EUの南北問題」。この2つはさも「新しい時代の流れ」に見えるが、実はそんなことはない。歴史を振り返れば、どちらも「繰り返される経済の流れ」の中にあり、このままではこれまでの歴史同様、国際社会の混乱が待ち受けている。ここで、『「お金」で読み解く世界史』の著者である関 眞興氏が、歴史的な視座から国際経済を振り返り、現在の反グローバリズムの潮流と行方についてわかりやすく解説する。
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「トランプ政権」と「EUの南北問題」は
第一次・第二次世界大戦を振り返ればよくわかる
(© takasu – Fotolia)

「アメリカ=ファースト」は新しい帝国主義時代の幕開けか

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関 眞興(せき しんこう)
1944年、三重県生まれ。歴史研究家。東京大学文学部卒業後、駿台予備校世界史講師を経て、著述家となる。『学習漫画 世界の歴史』『学習漫画 中国の歴史』(以上、集英社)の構成を手がけたほか、多くの著書がある。近著は『「お金」で読み解く世界史』(SB新書)
 日本人も含めて、アメリカは豊かな国家だと思っている人は多い。そしてそれは、いろいろな数値から見ても明らかである。

 しかし、2016年、トランプ氏が大統領選を制する中で、アメリカを築いてきた白人の中産階級の没落が深刻なものだと知り、驚いた人々も多かった。トランプ氏はそのような人々対し「アメリカ=ファースト」をスローガンに大統領に当選した。

 しかし、社会は「分業」で成り立っており、一国だけでの繁栄はあり得ない。雇用を生み出す産業をアメリカに集中させるという19世紀的・保護主義的発想は、自らの首を絞め、新しい帝国主義時代を到来させるかもしれない。

 近代的集権国家以前の王室や諸侯たちの財政は、「丼勘定」とまでは言わないまでも、それに近いのが実態であった。

 しかし、集権化が進むうちに国家財政をきちんと把握することの重要性が認識され、国富をお金に統一するという考え方が出てきた。これが「重金主義」であり、重商主義の輸入の抑制・輸出の拡大政策は、重金政策そのものである。このため、重商主義は、国益優先の「保護主義」政策であることは言うまでもない。

 保護主義に対して、世界経済に「自由主義」をもたらしたのはイギリスである。もちろんイギリスとて「イギリス=ファースト」だったのだが、いち早く産業革命を推進し、大量に生産した物資(最初は綿織物)を売りさばかねばならなくなったため、各国が採用している重商主義的保護政策を批判し、自由主義を押し付けていった。

 しかし、ドイツのような後進国では国内産業の育成のため、外国からの物資の流入は避けねばならず、経済の保護主義は不可欠であった。そのため、第1次世界大戦は、自由主義と保護主義の対立という側面を持っていたとも言える。

大国が富を集めると起きる問題

 第一次世界大戦は経済後進国ロシアを社会主義国家にした。そのソ連を除いたところで成立した国際関係は、ドイツを犠牲にしたという問題を抱えてはいたが、国際協調が基本路線になった。戦争を主導したイギリスは衰退、アメリカも19世紀の孤立主義に戻る中、不満を多く持ったドイツやイタリアでは全体主義政党が台頭、彼らの動きが第二次世界大戦を引き起こした。

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『「お金」で読み解く世界史』(関 眞興 著)
※クリックするとアマゾンのページにジャンプします。
 戦後は、米ソ冷戦が国際関係の前提になったが、西側諸国ではアメリカを中心にした自由主義経済体制が実現された。またヨーロッパでは、中小国家の対立から「統合」への道が模索され、それが1993年のヨーロッパ連合になって実を結んだ。

 しかし、その間、アメリカも反共のための行動で財政が行き詰まり、特に核兵器の管理は重荷になり、デタントといわれる動きは当然のものであった。そんな時にソ連が崩壊し、一方で中国が台頭した。

 ソ連崩壊後のロシアは、自由主義経済の衝撃でデフォルトし、エリツィンに代わってプーチンが権力を掌握、中国でも改革開放政策が矛盾も抱えたままで一段階したところで習近平が「核心」という名目での独裁体制をそれぞれに樹立している。

 トランプ政権も独裁と言えないわけではないが、アメリカ建国以来の民主主義的伝統がそれを防いでいる。それにしても、アメリカ・中国・ロシアといった巨大な国家が世界の富を集めると、中小国家でデフォルトに陥る国が多くなり、それによる国際社会の混乱が、巨大国家をも巻き込んでいくことは目に見えている。

【次ページ】「EUの南北問題」の原因は?

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