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2017年03月09日

電線の地中化(無電柱化)が本格化、「低コスト工法」が実現した観光客おもてなし

2016年末の「無電柱化推進法」施行を受け、全国で電線の地中化に向けた国や地方自治体の動きが活発になってきた。東京都は2020年の東京五輪に向け、中心部を通る都道の無電柱化を完了させる計画。世界的な旅行誌で満足度世界一に輝いた京都市も、新しい低コスト手法により、花街・先斗町で電線の埋設工事を2月から始めた。しかし、欧米の主要都市が地中化をほぼ100%達成しているのに対し、日本は最も進んだ東京23区でも10%に満たない。民間非営利団体「電線のない街づくり支援ネットワーク」理事長の高田昇立命館大客員教授(都市計画学)は「自治体が意識改革を進め、地中化を推進する必要がある」と指摘する。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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電線が地中に埋設され、京都らしい風景が引き立つ京都市南区の東寺前。
国宝・五重塔の景観も電線に邪魔されない

(写真:筆者撮影)


東寺前の無電柱化が外国人観光客に好評

 木造塔としては日本一高い約55メートルの国宝・五重塔で有名な京都市南区の東寺(教王護国寺)。東寺真言宗の総本山で、京都を訪れた観光客の多くがこぞって立ち寄る場所の1つだ。そんな東寺を南側の国道1号線越しに眺めると、電線に邪魔されず壮観な姿が目の前に広がる。

 国道1号線の京阪国道口から九条大宮まで300メートルは1998年、国土交通省の手により、電線が地中に埋設された。古都の景観に配慮するのが狙いの1つで、市内でも早い時期に整備された場所になる。同様の電線地中化は下京区の東本願寺前を通る烏丸通(国道24号)でもほぼ同じ時期に完了している。

 海外から京都を訪ねた観光客の多くが驚くのは、電柱や電線の多いことだ。外国人の目には電線で景観が台なしになっていると見えるようだが、これらの場所は古都らしい姿を目にできると喜ばれている。

 国交省京都国道事務所は「古都の景観に電線は似合わない。市内の直轄国道は順次、地中化を進め、古都らしい街づくりに貢献したい」と語った。

 国交省環境安全課によると、兵庫県姫路市の姫路城周辺、鹿児島県鹿児島市の天文館・城山エリア、岡山県真庭市の街並み保存地区などでも電線が地中に埋設され、観光客に好評を得ている。

 住宅地では、兵庫県芦屋市の六麓荘、大阪市阿倍野区の阿倍野再開発エリアなど地中化工事で美しい街並みに変わった場所もある。大阪市阿倍野再開発課は「電線が消えれば街の雰囲気がぐっと変わる」と強調する。

なぜ電線を地中化するのか?日本が遅れた理由とは?

 日本の都市は1980年代から本格的に電線地中化工事を進めてきたが、海外に比べて大きく遅れている。国交省や経済産業省によると、電線地中化率は欧州のロンドンやパリが既に100%。アジアでも香港が100%に到達したほか、台北やシンガポールが90%以上、ソウルやジャカルタが30〜40%台に達している。

 これに対し、国内は2014年3月現在で東京23区が7%、大阪市が5%、京都市が2%にすぎない。電柱の数も1987年に3,007万本だったが、2012年には3,552万本に達した。通信回線の増加などが理由で、毎年約7万本のペースで増えているのが実態だ。

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(クリックで拡大)

世界各都市の電線地中化率


 欧米では裸電線による感電事故防止などから、電線の地中埋設が早くから進んだ。その結果、今では無電柱化が当たり前になっている。さらに、地中に埋設した電線は風雪に強く、供給安定が図れるとも考えられてきた。

 国内では街並みが一新された戦後復興期、既に安全性の高い被覆コーティング技術が存在していた。このため、経済性が優先されて地中化に目が向かなかったわけだ。その後も東京都内で1キロ当たり5億3,000万円という高額の工事費が最大の障害となり、地中化が遅れている。

 しかし、地中化のメリットは景観保護だけでない。電柱がなくなれば歩道や車道を広く使え、交通安全に役立つ。大地震など災害時に電柱の倒壊がなく、防災面の効果も大きい。東京五輪を控え、都市の美観向上もこれまで以上に求められるようになった。

 これを受け、無電柱化推進法が超党派の国会議員で提出され、2016年末に施行された。国に無電柱化推進計画の策定を義務づける内容で、国交省が計画策定のための有識者会議を設置したほか、各地の自治体も重い腰を上げて動き始めた。

【次ページ】電線を集約して埋設する低コスト工法を開発

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