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  • 2017/01/19 掲載

カスタマー・エクスペリエンスとは何か? ガートナーが650のPJから導いたこと

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企業のトップは、顧客満足度をはじめとする「カスタマー・エクスペリエンス(CX:顧客体験)」に必ず配慮している。なぜならCXが向上すれば、株価も上がるからだ。しかし、ガートナーの調査によれば、具体的な行動を起こしているトップ、実際にCXに投資をしているCEOは25%に過ぎないという。では、企業はCXの向上に向けて、何から着手すればいいのか。またCXをどう測定し、組織をどう編成すればいいのか。ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストのエド・トンプソン氏が解説した。
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カスタマー・エクスペリエンスへの投資が非常に重要なものとなってきた
(© adiruch na chiangmai – Fotolia)


カスタマー・エクスペリエンスとは
カスタマー・エクスペリエンスとは、提供企業の従業員、チャネル、システムまたは商品とのインタラクションがもたらす一過性および累積的な効果によって顧客が得るパーセプション(認識、認知、覚)および関連するフィーリング(感覚、感情、気分)のこと。

カスタマー・エクスペリエンス管理(CEM)とは
カスタマー・エクスペリエンス管理(CEM)とは、顧客の期待を満たし、さらに顧客の期待を超えることで顧客満足度、顧客ロイヤリティ、顧客アドボカシを高めることを目的とした、顧客とのインタラクションの設計/対応のためのプラクティスのこと。

(※いずれもガートナーの定義)

顧客満足度が上がれば、株価も上がる

 「Gartner Symposium/ITxpo 2016」で登壇したトンプソン氏は、はじめにCXの変革に向けた5つのステップを提示した。(1)CXの向上による価値を証明する、(2)CXプロジェクトとテクノロジーを監査する、(3)測定項目を決定する、(4)ロードマップを作成して出発点を決める、(5)変化を起こす組織を編成する、という流れだ。

「まずCXの向上による価値の証明についてだが、たとえばある苦情処理に関する調査では、苦情処理に満足している消費者は乗り換え率が非常に低く、また紹介率が非常に高く、さらに再購入率も高いという結果が出ている。現在の顧客はよりパワーを持つようになり、選択肢があればすぐに企業を変え、自分の経験を他人にどんどん話し、よりよいCXに対してはお金を使う用意ができている。こうした外圧があるからこそ、企業は変わっていかなければならない」

 またガートナーがユーザー企業のCEOに対して、今後5年間でどの技術分野に重点的に投資するかを聞いたサーベイでは、CXを改善するためのテクノロジー、具体的にはカスタマー・エクスペリエンス管理(CEM) への投資が37%で、トップに挙がっているという。

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2015年のCEOサーベイ:今後5年間の最重要テクノロジ投資領域
(出典:ガートナー)


「(米国顧客満足度指数 (ACSI) 株式ポートフォリオの値動きを見ると)顧客満足度が上がれば、株価も上がるという相関関係があることは明らかだ。CEOはまさにここに注目している。今後5年間の最重要投資分野としてCEMが1位になっているのも、恐らくこの相関関係が1つの理由だ」

650のCXプロジェクトを7つのタイプに分類

 トンプソン氏は過去5年間にユーザー企業の約650ものCXプロジェクトをレビューし、それらを7つのタイプに分類したという。

「それが、聞き取り/考察/実行、外から内へ、一貫性、開放、個人化、姿勢の変更、設計の改良、という7タイプで、いわばCXを改善するためのアプローチ方法だ。皆さんが合理的な分析に興味がある場合には、聞き取り/考察/実行から始める。一方、個人化や姿勢の変更、設計の改良は、よりアーティスティックな取り組みだと言える」

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カスタマー・エクスペリエンス・プロジェクトの7つのタイプ
(出典:ガートナー)


 まず聞き取り/考察/実行は、調査を行って顧客の声を聞き、何を望んでいるのか、あるいは何に不満を持っているのかを分析して、改善活動に繋げていく。次の外から内へは、カスタマージャーニーを理解することで自社の業務プロセスを見直し、CXの改善を試みるものだ。

 そして3つめの一貫性は、会社として一貫性のあるCXが提供できるようにCXを改善するアプローチ、4つめの開放は、商品/サービスの利用のしさすさを見直すことによるCXの改善、5つめの個人化は、商品や提案内容のパーソナライゼーションによるCXの改善、6つめの姿勢の変更は、従業員の顧客に対する態度を改めることによるCXの改善、そして7つめの設計の改良は、理想的なCXは何かを自分たちで考えて再設計するアプローチだ。

「CXを担当されている皆さんは、まず自分たちがこの7タイプの中のどれに照準を当てているのか、たとえば7つすべての改善活動を行っているのか、あるいは1つだけなのか、またそれをやっているのは誰なのかを再認識する必要がある」

 そしてトンプソン氏は「この7つのプロジェクトの中でIT部門が最も多く関与するのが、外から内へと一貫性の2つの領域だ」と指摘する。

「外から内へでは、プロセスモデリングが肝となり、一貫性ではマルチチャネルの統合が重要になる。その他の領域では、担当部門をITでサポートするのが役割となる」

他社はどのようなCXテクノロジーに投資しているのか

 次に2016年に投資額を増やすCXテクノロジーについてガートナーが行ったユーザー調査では、上位から順に顧客分析、ビジネスプロセス管理、マルチチャネルでの顧客サービスという結果になったという。

「調査に参加してくれた企業の88%が、2016年のCXテクノロジーに対する投資額を増やすと回答している。またここで重要な点は、2011年頃に我々に寄せられるCX関連の問い合わせの95%がB2C企業からのものだったが、今ではその比率が65%に下がっており、一方でB2B企業からの問い合わせが3分の1以上を占めるようになっていることだ。そしてB2B企業のCXプロジェクトもすべて、先の7つのプロジェクトタイプのいずれかに当てはまる」

 しかし、B2C企業とB2B企業は性格を異にするものだ。

「一番の違いは、B2B企業においては、営業担当者がより重要だということだ。つまり彼らがCXにより影響を及ぼし得るということで、たとえば顧客企業の課題を分析して自社製品を購入してもらうための正当性を提示するとか、場合によってはエグゼクティブクラスの人間が営業の現場に出向くこともあるだろう。こうした活動には、コストも時間も労力もかかる。実際の取り組みを行う際には社内で承認プロセスを設け、実施後には本当にCXが上がっているのか、その効果を検証する必要があるだろう」

【次ページ】CXの組織編成、CXリーダーは平均何人の部下を持つのか

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