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  • 2017/01/18 掲載

物流センターが建設ラッシュ、アマゾン追撃の楽天とヨドバシ明暗のワケ

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このところ物流の分野において、大きな動きが相次いでいる。背景にあるのは、ネット通販ビジネスの質的・量的拡大である。これまでもリアルからネットへという流れが続いてきたが、アマゾンをはじめとするネット通販各社がより積極的なサービスを打ち出し始めたことから、競争は次のステージにシフトしている。リアルとネットの主従関係が逆転しつつある今、物流網をいかに構築できるのかが、勝敗の分かれ目となりつつある。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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きめ細かなネット通販のニーズに対応できる高度な物流センターは実は少ない
(© hit1912 – Fotolia)


新しい物流センターが圏央道沿いに集中立地

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 最近、首都圏では圏央道(もっとも外側に位置する環状道路)沿いに次々と大型物流センターが建設されている。投資を主導しているのは物流施設を得意とする外資系の不動産会社で、REIT(不動産投資信託)と組み合わせた形の開発が多い。

 こうした外資系企業のひとつで、シンガポールを拠点とするグローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)は昨年12月、2022年をめどに神奈川県相模原市に日本最大の物流倉庫を開設すると発表した。約29万5000平方メートル(東京ドーム約6個分)という広大な敷地に、1300億円を投じて6棟の巨大な物流施設を建設する。延べ床面積は65万平方メートルとなり、日本における物流施設としては最大規模となる。

画像
グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)の物流センター
(出典:GLP


 この場所は神奈川県と東京都多摩地域の人口密集地帯に近く、圏央道を通じて東名自動車道や中央自動車道と容易に接続できる。圏央道がすべて完成すれば千葉県や茨城県へのアクセスも可能となり、関東全域への出荷に対応できる。このため圏央道沿いには、多くの物流施設が作られており、最近ではちょっとした建設ラッシュの様相を呈している。

 同社は、神奈川県厚木市、綾瀬市、座間市、埼玉県日高市などにも次々と物流施設をオープンさせている。同じく外資系のプロロジスも都心を挟んで反対側あたる千葉県を中心に物流施設の建設を進めている最中だ。

 一連の動きの背景にあるのは、ネット通販サービスの高度化である。近年オープンしている物流施設は新しい世代に対応したもので、ネット通販の事業者が仕分けシステムなどを構築できるよう、ゆとりのある構造となっている。既存の物流施設が数多く存在しているにもかかわらず、これほどの建設ラッシュとなっているのは、新しいネット通販に対応できる施設が思いのほか少ないからである。

アマゾンが先鞭を付けたロボット物流センター

 物流センターのシステム化ではアマゾンがもっとも先に進んでいる。同社は昨年8月、最新の物流センターを川崎市にオープンしたが、このセンターには、国内初となるロボットによる商品管理システム「アマゾンロボティクス」が導入された。同システムは、米アマゾンが買収したロボット・ベンチャーである米キバ・システムズの製品をベースにしたもので、米国では16拠点、欧州では3拠点で導入されている。

 商品棚の下に薄い形状をした自走式のロボットが入り込み、棚ごと持ち上げて前後左右に移動する。倉庫内での配送と商品の保管を両立できるので、従来の物流センターよりも大幅にスペースを節約できるのが特徴だ。

 アマゾンはネット通販企業の中でも自社の物流網に強いこだわりをもっており、約10カ所の物流センターを自前で運営している。その中でも最大規模となっているのが2013年に稼働した小田原の物流センターで、延べ床面積は約20万平方メートルに達する。米アマゾンの物流センターの平均的な面積が11万平方メートルであることを考えると、小田原の施設は世界的に見ても大きい部類に入る。

アマゾンFC一覧
拠点名所在地開設時期
1アマゾン市川FC千葉県市川市2005年11月
2アマゾン八千代FC千葉県八千代市2007年10月
3アマゾン堺FC大阪府堺市2009年10月
4アマゾン川越FC埼玉県川越市2010年7月
5アマゾン大東FC大阪府大東市2010年11月
6アマゾン川島FC埼玉県比企郡2011年10月
7アマゾン狭山FC埼玉県狭山市2011年10月
8アマゾン鳥栖FC佐賀県鳥栖市2012年5月
9アマゾン多治見FC岐阜県多治見市2012年11月
10アマゾン小田原FC神奈川県小田原市2013年9月
11アマゾン大田FC東京都大田区2015年10月
12アマゾン西宮FC兵庫県西宮市2016年9月
13アマゾン川崎FC神奈川県川崎市2016年8月
Prime Now FC一覧
1アーバンFC世田谷東京都世田谷区2015年11月
2アーバンFC大阪大阪府大阪市2016年1月
3アーバンFC横浜神奈川県横浜市2016年1月
4アーバンFC江東東京都江東区2016年2月
5アーバンFC豊島東京都豊島区2016年11月
主なFCの延床面積
アマゾン小田原FC:延床面積 約60,000坪(約200,000平米)
アマゾン多治見FC:延床面積 約24,000坪(約80,000平米)
アマゾン鳥栖FC:延床面積 約19,700坪(約65,000平米)
(出典:アマゾン提供資料、2016年12月時点)

 これに加えて、アマゾンは有料会員向けサービスである「プライムナウ」の強化を進めている。これは専用アプリから注文を受け付け、1時間以内に配送するというもので、これまで東京や大阪の一部地域が対象だったが、東京については23区すべてが対象エリアとなった。

 アマゾンはプライムナウの実施にあたって、既存の物流センターとは別に、消費者に近い場所に小規模な配送センターを複数開設した。拠点となる物流センターの下に、地域密着型の小さな配送センターを置くことで、運送会社を介さない最終顧客への直接配送を実現している。

【次ページ】誰が顧客への最終配送ルートを握るのか?

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