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  • 2012/12/12 掲載

一色正男教授インタビュー:日本型スマートハウスは世界に出るか?ECHONET Liteの挑戦

HEMS市場のキーファクター

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省エネ、畜エネ、創エネ、CO2削減を実現するHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の代表格といえば「スマートハウス」だ。富士経済の調査によると、2011年の世界のスマートハウス関連市場は前年比約1.2倍の2兆7,000億円にのぼり、2020年には世界で12兆円、日本でも3兆4,700億円に拡大するとみられている。このスマートハウスにおいてキーになるのが、相互の機器を連携させるための通信規格「ECHONET Lite」だ。家電や太陽光発電、EVなどを含む、約80種類以上の機器の制御を規定したECHONET Liteの認証を支援する世界初のセンターがオープンした。同センター長で、スマートハウスビジネスに詳しい神奈川工科大学 教授、慶應義塾大学 特任教授の一色正男氏に話を聞いた。
ECHONET Liteとは
エコーネットコンソーシアムにて策定されたHEMS構築のための通信規格。家電機器、スマートメーター、太陽光発電システムなどを含む約80種類以上の機器の制御を規定している。従来の規格「ECHONET」を見直し、ソフトウェアの実装を軽装化した。2012年2月、スマートコミュニティ・アライアンスの「スマートハウス標準化検討会」より、「公知な標準インターフェース」として推奨され、スマートハウス向け制御プロトコルとしてISO規格、IEC規格として国際標準化されている。

スマートハウスとスマートフォン連携による新規事業も期待

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神奈川工科大学
創造工学部
ホームエレクトロニクス開発学科 教授
スマートハウス研究センター所長
慶應義塾大学
大学院政策・メディア研究科
特任教授
一色 正男氏
東京工業大学理工学研究科卒業。工学博士。2009年1月より慶應義塾大学教授、国際規格W3C(World Wide Web Consortium)のSite Managerとして就任。東芝時代には世界初のホームITシステム「フェミニティシリーズ」の事業責任者として企画から立ち上げを担当。世界初のBluetooth無線対応のIP家電も商品化。エコーネットコンソーシアム2008運営委員長、現フェロー。
画像
スマートハウスのイメージ
(出典:エコーネットコンソーシアム)

──まず、スマートハウスが今なぜ注目を集めているのかについてお考えをお聞かせください。

 実は、日本では古くから家電機器をつなぐ技術がさかんに研究されてきました。家電製品をはじめ、各種機器をつなぐための標準規格であるECHONETも1997年から始まっていたものです。既に市場に出回っている一部の家電はECHONETレディで、エコーネットコンソーシアムによれば1400万台以上にのぼります。

 それがここに来て、省エネはもちろん、自然エネルギーを活用した「創エネ」や、大型バッテリーによる「畜エネ」といったキーワードも注目されはじめました。それらの要請を受けて、エネルギー効率が考えられた家が「スマートハウス」であり、HEMSのための通信規格としてECHONETが見直されたということです。

 昨年、ECHONETを軽装化したECHONET Liteが登場し、ようやくつなぐ仕組みとつながれるべきもの、この両者が整いました。技術も出揃ってきたので、今後本格的に進展していくことが見込まれています。

──「ECHONET Lite」の存在はビジネス創出の後押しになっていますか?

 後押しになってくれるように期待しています。昨年12月から3ヵ月かけて、相当数の人とECHONET LiteのHEMS標準化について論議しました。経済産業省主催のスマートハウス標準化検討会のHEMSタスクフォースで座長をやりましたが、電力会社、ハウスメーカー、自動車、社会インフラ、電機、通信、部品メーカー、コンソーシアムなどの技術責任者100人以上と顔を突き合わせて、産官学でECHONET Liteに技術仕様を集約させて、どこまで日本としてできるのかを検討してきました。

 標準化はあくまでスタートですが、実際には、太陽光と蓄電池とコントローラーが付いた家は既にかなり売られています。まさに走りながら標準化も進めたという感じですが、それが重要で、この点はグローバルなやり方に近づいたんじゃないかと思います。

──新規事業としては、どのような製品やサービスが生まれてくることを期待していますか?

 スマートフォンアプリなど、今は大手のメーカーだけが手がけていますが、もっと幅広い企業や開発者から生まれてくる可能性があると予想しています。イノベーティブなアプリが登場すれば、劇的に生活が変わる可能性もありますし、こうしたアプリが生まれて欲しいとも思っています。

──実際、スマートハウス化によって、どのくらい節電効果が見込まれるのでしょうか?

 経験的には省エネになるのは10%ぐらいだと思います。ただし、何も考えてない駄々漏れ状態の家では20%ぐらいは節電できると思います。

 照明、エアコン、コタツなどが付きっぱなしにしていることが少なからずあります。無駄な電力を見える化してコントロールできれば、こうしたベーシックな部分だけで10%は省エネは可能です。

 あとは電力のタイムシフトによって省エネを実現できます。たとえば太陽光発電では、余剰電力は売れますが、電力会社から電気を買わず、蓄電していたものを夜間に使ったほうがよいケースもあります。

 タイムシフトを行うには、やはりインテリジェントな機能がないと難しいです。いま蓄電池にどのいくらい電気がたまっているか。創エネと蓄エネと省エネの連携は、HEMSがつながったときにはじめて発揮できるものです。生活に密着した部分については、これから進めていかなければならないところですね。

──スマートハウスというと一戸建てというイメージがありますが、マンションなども関係しているのでしょうか?

 マンションももちろん関係しています。スマートハウス関連の技術を一枚絵で示そうとすると、太陽光発電やEV(電気自動車)のための車庫といった要素が入るため、誤解を生んでいるのかもしれません。スマートフォンを使って、外出先からオン・オフができる家電などはわかりやすいと思います。

──我々の生活の中にHEMSが定着していくのはどのくらい時間がかかりそうですか?

 正確に調べてはいませんが、既に3万件ぐらいの家屋でHEMSが導入されているので、まず第一歩は進んだと考えています。次のターゲットは10万件。これは3年ぐらいで達成できるでしょう。

 とはいえ、日本の世帯数の10%、500万件となるとまだまだ遠い状況です。これは新築のみの目標ですが、既築の家もあるので今後どのくらい伸びるかは分かりません。工務店の力にもかかってきますからね。

 ただ実際にHEMSが導入され、機器同士がつながりはじめれば、かなり生活が便利になります。洗濯が終わったら、テレビにメッセージを表示させてあげる、天気のよい日には乾燥モードをパスするようにお勧めするなど、身近な機能がサービスとして提供されるようになります。こうした効果を伝える地道な積み重ねが、さらなる市場拡大につながるだろうと思います。

【次ページ】工務店から通信キャリアまで、全業界を巻き込んで発展
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