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  • 2015/09/07 掲載
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ものづくり大国ドイツが、ITを利用した産業革命「インダストリー4.0」に国をあげて取り組んでいる。一方アメリカでは、GE社が主導して「インダストリアル・インターネット」を提唱、製造業の新しいスタイルを確立しようしており、日本の製造業はすでに5年の遅れを取っていると言われている。日本企業はこうした世界的な潮流に対しどう対処すべきなのか。2015年7月31日 日立ソリューションズ主催で名古屋で開催されたセミナー「日本の製造業はインダストリー4.0にどう対処すべきか~グローバルで真の『つながる』『見える化』を実現する為に」では、100名近い製造業の担当者が参加し、インダストリー4.0を巡るドイツやアメリカの最新動向の紹介と、日本製造業がどう対処すべきかについての講演が行われた。

ドイツ発「インダストリー4.0」が目指すスマートファクトリーとは

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株式会社フロンティアワン
代表取締役
鍋野 敬一郎 氏
 基調講演を行ったフロンティアワン 代表取締役 鍋野敬一郎 氏は、まずIoTの市場動向から説明した。米国の調査会社Gartnerによると、2020年におけるIoTの経済規模は1兆9000億ドル(約250兆円)になると予測されている。

この巨大マーケットに対する取り組みが、ドイツの「インダストリー4.0」であり、アメリカ GE社の「インダストリアル・インターネット」である。まず、ドイツの「インダストリー4.0」について、鍋野氏は次のように説明した。

「ドイツのインダストリー4.0は、製造業におけるIoTの取り組みであり、産官学の国家プロジェクトです。ドイツ工学アカデミーという組織を中心に実証試験や検証を行い、その情報を産業界にフィードバックするやり方をとっています。2011年から始まり、2020年~2025年あたりをゴールにした、かなり腰を据えた取り組みです。4.0には『第4次産業革命』という意味が込められています」(鍋野氏)

 インダストリー4.0においては、「スマートファクトリー(つながる工場)」が重要なコンセプトとなる。従来の工場は、製品設計、生産設計、生産管理、販売管理、保守・保全という水平方向のPLMと、ERP(基幹システム)、MES(製造実行システム)、SCADA(生産監視制御システム)などの垂直方向の製販管理が分断していた。これに対し、スマートファクトリーでは、MES以下の仕様・フォーマットの標準化をすすめ、水平・垂直方向を連携させることで、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを構築したりすることを目指している。

スマートファクトリーを実現する製造・管理手法が「ダイナミックセル生産方式」だ。これは、TPS(トヨタ生産方式)や米国のリーン生産方式をベースにドイツが考案したもので、設計から生産までの工程ごとに標準化を行い、工程ごとに組み替えることで、柔軟で自律的な生産管理を実現するものだ。

 そして、インダストリー4.0の要になるのがソフトウェアであり、その世界標準の座をめぐって、SAP、シーメンスなどのドイツ大手企業が積極的に活動しているという。

「インダストリアル・インターネット」でGEは産業界のアップルを目指す

  ドイツが工場を中心に据えたのに対し、アメリカは機械を中心に置いて、AIやディープラーニング、機械学習などの技術を使い、機械をネットワークで結んで情報活用しようとしている。

 その中心がGEだ。GEは産業機器をインターネットでつなぎ、データ解析による高度な意思決定を可能とする「インダストリアル・インターネット」を提唱した。2014年3月には、「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」を設立し、現在、日本企業も含めた184社が加盟している。

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 「GEによれば、1つの機械に200~300個のセンサーを付けて情報をモニタリングすれば、故障を予知したり、稼働の無駄を洗い出して効率的に運用したりできるといいます。そのプラットフォームとして開発されているのが『Predix(プレディクス)』という基本ソフトウェアです。GEが考えているのはアップルと同じようなモデルです。iOS上にさまざまなアプリがあるように、Predixを提供し、その上でさまざまなソフトが動くようにしたいのです」(鍋野氏)

 「Predix(プレディクス)」とは、機器・設備に設置したセンサーからデータを取得・解析し、機器・設備の制御を行うクラウドコンピュータのOSだ。鍋野氏によれば、産業用におけるアップルのiOS、マイクロソフトのWindowsのような存在だという。すでにGEは、石油、ガス、電力、水、輸送、航空、医療などの24分野向けのアプリケーションを提供し、「Predix」自体をオープン化して、広く活用できるようにする予定だ。日本およびアジアで「Predix」を取り扱うのが、ソフトバンクとなっている。



ドイツにはすでに5年遅れ、日本のものづくりが勝ち残るには?

 では、日本のIoTへの取り組みはどうか。鍋野氏は、次のように危機感を露わにした。

「ドイツに対して、日本はすでに5年遅れています。すでに、ソフトウェアはドイツ、アメリカが先行していますから、ソフトウェア・フォーマットなどの標準化については欧米のモノをそのまま採用し、それをうまく利用して、その先に行かなければならないでしょう」(鍋野氏)

 大きく遅れをとってはいるが、今からでもIoTに取り組まなければ日本に未来はない。そこで鍋野氏が強調したキーワードが、デジタルとアナログを融合するという意味での「FUSION」だ。具体的に取り組みとして、ビジネス環境の変化に即応できる体制を整えること。自社の強みと弱みを棚卸しすること。そして、製造とサービスを融合させて、新しいビジネスモデルを作り出すことが必要であるとし、次のように強調して基調講演を終了した。

「先行するドイツ、アメリカの仕組みを取り込んで、モノ+サービスの強みを作り、アナログとデジタルを融合(FUSION)した新しいビジネスモデルを実現することが求められています」(鍋野氏)

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【次ページ】 製造現場の情報をリアルタイムに吸い上げてグローバルで見える化する取り組み

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