IoTの裏側にビジネスモデルをどう描くか──IoT導入における課題を経営層が徹底討論!
経営者ラウンドテーブルレポート:共催 セールスフォース・ドットコム
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IoT時代の到来、試される経営層の視座
日本の製造業では、経営層がIoTビジネスを重要課題として捉えず、実質的に技術部門に丸投げしているケースが多い。今後グローバル競争の中で日本企業が勝ち抜いていくためには、経営者自らがリスクテイクや、リソース再配分まで踏み込んだ議論を重ねていく必要がある。本研究会では、IoTをビジネスに取り入れてきた先進企業の事例紹介と、参加者のディスカッションという形式で進められた。「電機・家電メーカーとして名高いオランダのフィリップスは、すべての医療機器にセンサーを付けて、情報をSalesforceのプラットフォームで共有しています。同社は、ヘルスケア分野を事業の3大柱として展開していますが、その中で地域医療費の半分が、わずか5%の患者によって消費されていることを知りました」(川原氏)
そこでフィリップスでは、これらの患者を適切に管理することで、医療費を大幅に削減する施策を打ち出したという。
「各地域の大学病院に心拍計などを貸し出し、対象の患者に無償でレンタルしています。もし何かあった場合には、コールセンターとビデオで連携し、集中的にケアできる取り組みをスタートさせました。それをシンガポールからBPOアウトソーシングで実現しているのです。このように、IoTの裏側には新しいビジネスモデルがあり、そのイメージをいかに描けるかということがカギになるでしょう」(川原氏)
情報空間の最後の1cmを埋める! サトーの先進的なIoTの取り組み
この話題を受け、先進事例として登場したのが、サトーホールディングスだ。同社の小玉 昌央氏は、サトーのIoT戦略を紹介した。サトーは、ハンドラべラーや、POS時代の可変・固定情報ラベル対応熱転写プリンタを世界に先駆けて発明してきた企業だ。現在は、さらにバーコード・QRコード、RFID、NFCと各種タギング技術を開拓し、次のIoT時代を見据えた「自動認識ソリューション」を主力技術として展開している。そして顧客価値の1つの解として、IoTを駆使した新サービスを考案。世界中で使われている同社のプリンタを24時間365日体制で常時監視して、故障しないように保守を行う「SATO Online Services」(以下、SOS)を提供している。これは、万が一プリンタが停止しても、オペレーターが問題をリモートで迅速にサポートしてくれる仕組みだ。まさに「バーチャル・カスタマーエンジニア」がお客さまの現場に常駐する状態と同じ効果をもたらす。
さらに同社は、次なるIoT戦略「Inbound Works」についても触れた。同社は、経済産業省が推進する「ID連携トラストフレームワーク」の一環で、すでに銀座三越で「訪日外国人へのおもてなしサービス」実証実験を実施している。これは外国人旅行者に使用言語や希望商品などの情報を登録してもらい、発行したリストバンドを店舗内の情報端末にかざしてもらうことで、オススメ商品の情報やその売り場への案内マップなどを希望言語で提示する仕組みだ。
Inbound Worksは、これをさらに発展させたサービスだ。「旅の始まりは、出発前の旅の準備からスタートします。そこから入国、移動、宿泊、食事、イベント、観光、買い物、帰国そして帰国後の土産話まで、多くのシーンで活用できる“カスタマージャーニー”として、最適なサービスをご提供できるようにします」と小玉氏は抱負を語った。
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