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  • 2012/06/29 掲載

どう対処する?ISO/IEC20000-1:2011で強化された「重大なインシデント」

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2011年3月11日、未曽有の大震災を受け、国内企業は、あらためて事業継続の重要性を痛感させられる結果となった。ITサービスマネジメント製品を開発・販売するキーポート・ソリューションズの黒瀬美宏氏もそんな1人だ。まさに大震災当日、セミナー会場で講演をしていた黒瀬氏。地震直後から会場で待機状態になってしまったという。このような体験から「重大なインシデントが発生したときでも迅速に動けるように、日頃からリスク対処法や事業継続体制を整えておくことが必要だ」と力説する。

適切な対処が求められる「重大なインシデント」とは

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キーポート・ソリューションズ
黒瀬 美宏氏
 東日本大震災の当日、電話やメールがつながらず、連絡手段として唯一残ったのは「Twitter」や「Facebook」をはじめとするWebサービスだったことは有名な話だ。キーポート・ソリューションズの黒瀬美宏氏は、6月1日に開催された事業継続のためのITサービスのRe-Modelingセミナーにおいて、次のように振り返った。

「家族に電話しましたが、肝心の固定電話も携帯電話もつながらず、電子メールやCメールもすべて全滅状態で、連絡がつけられませんでした。あとで家族に聞くと、地震直後に家の周辺はすべて停電になっていたそうです。」(黒瀬氏)

 キーポート・ソリューションズでは、グループウェアとして「サイボウズ」を導入しており、幸いにもメール機能や伝言板機能は稼働していた。したがって、東北にいた社員との間でも安否確認ができたそうだ。

 このような経験から、黒瀬氏は「“重大なインシデント”が発生したときに、企業が事業を継続していくための対策や準備体制がいかに重要なものかということを痛感させられました」と語る。

 重大インシデントには、火災や集団食中毒のようなある程度の頻度が想定されるものから、大規模地震のように頻度が低いものまで、さまざまな種類がある。昨年改定された国際標準規格のISO/IEC20000-1:2011では、これら重大インシデントの取り扱いに関する要求事項が大きく強化・拡充された。特に「インシデント管理」のプロセスでは、「重大なインシデントについての定義の文書化」「文書化された手順に則った分類・管理」などの要求事項が新たに追加されている。

 では、実際にこのような重大インシデントに対応するためには、具体的にどうしたらよいのだろうか?

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重大なインシデントに対応するBCPM

 キーポート・ソリューションズでは、昨年からITサービスマネジメントソフトウェア「Bit Cruiser Process Management」(以下、BCPM)を販売してきた。これは、もともとISO/IEC20000の標準プロセス(インシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理、リリース管理)を一元管理するために開発されたものだが、今回の震災を受けて機能を向上したという。

「新バージョンでは、従来までの標準インシデントのみならず、重大なインシデントの管理についても、準備された手順で十分に対処できる仕組みを盛り込みました。」(黒瀬氏)

 BCPMは、インシデント・問題・変更・構成・リリース管理用の「ワークフローアプリケーション」のほか、プロセス作成用の「プロセスデザイナー」、画面作成用の「フォームデザイナー」、組織・プロセス・画面・マスターなどを登録する「運用管理ツール」で構成される。

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Bit Cruiser Process Managementのシステム概要
(出典:キーポート・ソリューションズ,2012)


 プロセスデザイナーは、業務プロセスを見える化し、状況に応じたプロセスをプログラムレスで短時間に作成できるツールだ。プロセスをコピーして再検討し、部分修正を加えて、さらに最適なものに改変していける。

 一方、フォームデザイナーのほうは、細かい画面項目などをプログラムレスで追加・変更できるツールだ。新たなKPIなどの導入によって変更が出ても、項目を簡単に設定できる。また項目を分類や区分に設定し、「検索キー」とすることで検索精度も上げられる。

 運用管理ツールも便利だ。たとえば、組織再編があった場合に変更内容を事前登録し、新組織のスタートに合わせて自動運用できる。部・課だけでなく、ITサービスを管理するための横断的なグループとして、担当者を個別に登録することも可能だ。

 バージョンアップしたBCMPの新機能には、入力の効率や精度を改善するための工夫が盛り込まれている。項目の値による必須入力にも対応。たとえば障害レベルが最大の「Red」では、障害の報告をしないと次へ進めないため、情報の精度を高められる。また項目間の連携機能により、複数項目を指定し、その結果から別項目の値を決定するといった使い方もできる。これは重大なインシデントが発生したとき、緊急度とインパクトに紐づいた「優先度」(緊急など)を自動決定するために便利な機能だ。

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自動的にプロセスが選択される「項目間連携機能」
(出典:キーポート・ソリューションズ,2012)


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一般的なワークフロー製品では対応できないITサービスマネジメントの事業継続

 黒瀬氏は、BCMPの具体的な使い方についても実演した。

 まずログイン画面から、ワークフローアプリケーションに入り、サポート一時受付プロセスの処理を行う。開始したいプロセスを選択すると、そのプロセスに対応したフォームが表示されるので、そこに問いわせ内容を記述して申請ボタンを押す。すると申請確認と共に、次の処理グループに伝えたい備考欄が出るので、必要に応じて入力する。このメッセージは処理を渡すタイミングでメールとして飛ぶようになっている。

「東日本大震災では、メールが確認できなかったのですが、有事の際にWebサイトにアクセスすることを徹底しておけば、被害の状況を把握したり、適切な指示を送ることが可能です。」(黒瀬氏)

 インシデント受付プロセスは、先ほどのサポート一時受付プロセスから飛んできたインシデントを受け付けるものとなる。

「インシデントのレベルによって、次のプロセスが変わってきます。たとえば“重大”の場合は、災害状況を選択するとルールに従った事業継続区分が決定され、作業手順が表示されます。」(黒瀬氏)

 そしてユーザーはその作業を実施し、作業報告の概略を記述する。もし関連資料などがあれば添付してから承認するという流れだ。

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重大インシデント処理プロセスの画面例
(出典:キーポート・ソリューションズ,2012)


 さらに黒瀬氏はBCMPの差別化のポイントについて次のように説明した。

「一般のワークフロー製品では、1つ前のプロセスにしか差し戻せないものがほとんどです。しかしITサービスマネジメントでは、ある程度プロセスが進んでから根本的な原因が判明し、いきなり最初に戻ってやり直さなければならないこともあります。そこで最初のプロセスに差し戻せるようにしました。また、案件がクローズドされたあとであっても、次の重大インシデントの事例として活用したいというケースがあります。そのため、クローズドした案件も検索の対象にしました。」(黒瀬氏)

 今後、キーポート・ソリューションズではBCPMとオープンソースソフトウエアの監視ツールであるHinemos、構成管理ツールであるSubversion、資産管理ツールであるGLPIなどとのインターフェイスを開発し、これらの組み合わせで、安価で包括的なソリューションとして進化させていく方針だという。

 東日本大震災を機に、危機管理と事業継続性への取り組みを真剣にスタートする時期が来ている。ITサービスマネジメントソフトウェアであるキーポート・ソリューションズのBCMPは、重大なインシデントが発生した際でも、業務を円滑に進めるための強力な武器になるはずだ。

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